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コラム 2026-05-12 読了 5分

幹部が育たない会社に、起きていること

幹部候補が育たないのは、本人の意識や能力だけの問題ではない。育つ構造になっていないことが、原因であることが多い。

「うちは幹部が育たない」

この言葉を、経営者から聞く機会が多い。

研修に行かせた。権限も渡した。給与も上げた。それでも変わらない。次第に「本人の意識の問題だ」という結論に落ち着いていく。

その判断が完全に間違っているとは言わない。ただ、同じ問題が繰り返されている組織を見るたびに、もう少し別の場所を見る必要があると感じる。

問題は本当に、本人にあるのか。


「意識の問題」という説明の限界

幹部が育たないとき、よく使われる診断がある。「当事者意識が低い」「マインドセットの問題」「覚悟が足りない」。

これらは、説明としては成立する。しかし診断として使うには、一つ致命的な欠点がある。

説明が本人に収束してしまうため、組織の構造が変わらない。

「意識が低いから育たない」という診断で終わると、次の打ち手は「意識を高める研修を入れる」か「本人を入れ替える」の二択になる。どちらも、育てる構造そのものには触れていない。

同じ構造の中に別の人材を入れても、やがて同じ問題が起きる。これが「何年経っても幹部が育たない」という状況の正体であることが多い。


育たない会社に起きている3つの構造問題

失敗の扱い方

失敗が「責任を取らせる」ための材料になっている組織では、人はリスクを取らなくなる。

表面上は「失敗を恐れるな」と言っていても、実際に失敗した人間への処遇が厳しければ、その言葉は機能しない。行動を決めるのは、言葉ではなく実績だ。

幹部になる手前の人間は、必ず「ここで失敗したらどうなるか」を見ている。その答えが「責任を問われる」であれば、判断から逃げることが合理的な選択になる。判断から逃げ続けた人間が、幹部として機能することはない。

期待値の渡し方

「頼む」と言いながら、結果にしか関心がない。これが幹部候補の育成を止める。

任せる、という言葉は正しい。しかし「何を期待しているか」「どのように育てたいか」の設計がなければ、任せられた側は手探りになる。手探りの中で失敗すれば、前述の問題が起きる。

育成とは、能力値を上げることではなく、判断できる領域を広げることだ。そのためには、今どこまで任せているのか、次に何ができるようになってほしいのか、の輪郭が必要になる。この設計がなければ、何年経っても「任せたつもり、育っていない」の繰り返しになる。

社長との距離感

社長が最終判断を全部握っている組織では、幹部は「考える筋肉」を使わなくなる。

何かあれば社長に持っていけばいい。そういう構造の中に置かれると、人はやがて自分で判断することをやめる。これは意欲の問題ではなく、適応の問題だ。

社長が判断を手放すのは怖い。それは理解できる。しかし適切な距離感がなければ、幹部が育つ機会そのものが発生しない。距離感は、設計するものだ。


育つとはどういうことか

能力値の上昇ではなく、判断できる領域が増えること。

そのためには三つが必要になる。失敗できる環境、期待値の明確さ、適切な距離感。この三つが揃ったとき、人は初めて「考える必要がある状況」に置かれる。考える状況に置かれ続けることが、育つということだ。

逆に言えば、この三つのどれかが欠けていれば、どれだけ優秀な人材を入れても同じ問題が繰り返される。


最後に

幹部育成の問題は、多くの場合、人の問題ではなく構造の問題だ。

Humanomyでは、人材アセスメントを通じて個人の特性と適性を読み解くとともに、構造理解研修(合宿型)を通じて組織の設計そのものを問い直す機会を提供している。

問題が「本人の意識」に見えているとき、その背景にある構造を一緒に整理することが、出発点になると考えている。


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